2016.05.24 Tuesday

中世ヨーロッパで、なぜ複式簿記は普及したのか?

 現代の企業会計の基礎にある複式簿記は、中世のイタリア・ヴェネツィ
アの商人たちの間で、その仕組みが完成されていました。
 当初、複式簿記は、商売を続けるうえで必要な帳簿の記録方法として商
人だけに伝わりましたが、やがて、ヨーロッパ中に広がり、その後、今日
まで、何世紀にもわたる紆余曲折を経ながら、企業会計の効率的な計算手
法として発展を遂げました。

1.商売継続の3条件
  パチオリ(ルカ・パチオリ〜1494年『スンマ』という数学書でヴェネ
 ツィア商人が使用していた複式簿記を学術的に解説)は、商売を継続す
 るための条件として、「現金」「帳簿」「複式簿記」の3つが必要とし
 ています。
  峺宗 ゞ癲廖ΑΑΩ酋癲覆△襪い呂修瞭嬰物)がなければ商売を続
           けることはできない。
 ◆崢◆ (蹇廖ΑΑδ∧蹐鬚弔韻襪海箸膿字に強くなる。
 「複式簿記」・・・借方と貸方を使うなど、秩序だって整理できるた
           め、すべての取引が一目でわかるようになる。

2.帳簿をつける意味
 (1)スティーブ・モンテージの見解
  『やさしい借方と貸方』(1675年)の著者スティーブ・モンテー
 ジは、1690年に、複式簿記が意思決定能力を高めると述べています
 。
  「帳簿を日々正しく付けている人は、費用という船の舵取りから帆の
 上げ下げまでを理解する。ところが、多くの商人は、脈絡なく考え、迷
 路に迷い込む。しかもそうとは気づかずに、利益は十分にあり(実際に
 はほとんどない)、費用は大したことがない(実際には山のように積も
 っている)と思いながら、行き当たりばったりに金を使っている。現実
 が見えずに、こうしたことを重ねれば、知らず知らずのうちに商売は傾
 き、果ては一家が路頭に迷うことになる」

 (2)ダモエル・デフォーの見解
  『ロビンソン・クルーソー』の著書であるダニエル・デフォーが、経
 営者の在り方を論じた『イギリス商人大鑑』(1725年)において、
 複式簿記で帳簿を付ける意味を次のように語っています。
  「正確に記帳したからといって商売がうまくいく、あるいは長く商売
 を続けることができるとは限らない。きちんと記帳したからといって、
 利益が上がるわけではないからだ。しかし、これだけは言える。帳簿を
 適切につけていることは、本来なら商売につきものの諍い(いさかい)
 や訴訟などのやっかいごとを避けながら、堅実に商売をしていることを
 意味する。」

 【参考】「バランスシートで読みとく世界経済史
  (ジェーン・グリーソン・ホワイト著、川添節子訳、日経BP社刊)